
東京都新宿区が、住宅地や学校周辺での民泊営業を原則禁止する方針を固めました。新規開業だけでなく、既存の施設にも適用します。現状の半数以上、約2000件の民泊が営業できなくなる可能性があります。
一見すると東京の話です。しかし、これから空き家の活用や土地の使い道を考える方にとって、見過ごせない前例が含まれています。
何が決まろうとしているのか
新宿区の民泊届出住宅数は3775件(2026年7月15日時点)で、市区町村別の全国最多です。
区が示した方針は次のとおりです。
- 住居専用地域や文教地区では、新規開業を禁止
- 既存施設も、猶予期間の後に原則営業禁止
- 商業地域では、営業日数の上限を年180日から120日へ
- 商業地域の既存施設も、猶予期間の後に120日へ
- 家主が同居して適切に運営できる場合などは、例外的に認める
2026年10月に意見公募、2027年2月の区議会で審議、2027年夏以降の施行という日程です。
なぜ個別の取り締まりでは止まらなかったのか
新宿区にはこれまでも苦情が寄せられていました。ごみ出しのルール違反、騒音、私有地への立ち入り。昨年度は1334件で、前年度から542件増えています。
区は手をこまねいていたわけではありません。法令違反を繰り返した29事業者に業務停止を命じ、5事業者には廃止命令を出しました。それでも苦情は減りませんでした。
区の幹部はこう述べています。悪質な民泊に個別対応するマンパワーが足りない、一律で規制する必要がある、と。
ここが本質だと考えています。規制強化の理由は、悪質な事業者が増えたことそのものではありません。行政の処理能力が需要の量に追いつかなくなったことです。
だとすれば、同じ悩みを抱える自治体は横並びで同じ手法を選びます。京都市も住宅地などでの事実上の営業禁止を検討しています。
「届出」と「許可」の差が、はっきり出ました
今回の件でもっとも重い意味を持つのは、既存施設まで対象にした点です。
住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊は、届出制です。旅館業法の許可に比べて格段に始めやすい。その手軽さが2018年の制度創設時の売りでした。
しかしその裏返しとして、条例で消せます。国も2026年7月15日、住民の生活環境が損なわれる場合には条例で営業を禁止できるとの通知を出し、既存施設についても猶予期間を設けたうえで禁止することは考えられる、としました。新宿区はそれを最初に使う自治体になります。
すでに営業している施設が、後から出た条例で営業できなくなる。この前例ができた意味は小さくありません。
私たちの見方
宿泊事業に取り組む方から、民泊と旅館業のどちらで始めるべきかというご相談をよくいただきます。
届出は速くて安い。許可は時間も費用もかかる。それでも私たちは、多少ハードルが高くても旅館業の許可を取る道をおすすめしてきました。
今回の新宿区の件は、その判断を裏づけるものだと受け止めています。参入のハードルは、裏を返せば自分を守る壁でもあるからです。
では、姫路のような地方の観光都市ではどう考えればよいのか。次回はその話を書きます。
